技人国で採用した人材に、まずは現場に入って仕事を覚えてもらいたい。あるいは、接客も担当してもらいたい。飲食・小売・製造業の採用担当者から、こうした相談が多く寄せられます。
現場作業や単純な接客が業務の中心になっていると、更新の際に不許可となったり、そもそも申請段階で認められなかったりすることがあります。
この記事では、技人国の対象になる業務とならない業務の境界線を整理します。
本記事は行政書士法人HAL大阪のスタッフが、出入国在留管理庁の公表資料をもとに執筆・監修しています。
この記事で分かること
- 技人国が対象とする業務の考え方
- 対人業務(接客・通訳等)がどこまで認められるか
- 現場での実務研修はどこまで許容されるか
- 業種別に見る判断の分かれ目
技人国が求めているのは「専門性を要する業務」であること
技人国(技術・人文知識・国際業務)の対象となる活動は、入管法上、理学・工学その他の自然科学分野、または法律学・経済学その他の人文科学分野に属する技術・知識を要する業務、あるいは外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務と定められています。
指示された作業を体力や慣れでこなす業務、専門的な判断を伴わない反復作業は、この定義に当てはまりません。学歴や資格の要件を満たしていても、実際に従事させる業務の中身が専門性を要しないものであれば、在留資格そのものが認められない、あるいは更新時に問題になります。
対人業務(接客・通訳等)がどこまで認められるか
語学力や専門知識を活かした対人業務は、技人国の対象になります。通訳・翻訳業務、外国人観光客向けの案内・接遇、広報・宣伝、語学指導などが代表例です。
一方で、レジ打ちや品出しのように、語学力や専門知識を必要としない接客・販売業務が中心になっている場合は、対人業務としては認められません。同じ「接客」でも、専門性を要する業務かどうかで扱いが分かれます。
なお、主に言語能力を用いて対人業務に従事する場合、2026年4月15日以降の申請では、業務上使用する言語についてCEFR・B2相当の言語能力を有することを証する資料の提出が求められています。対象範囲や証明方法の詳細は、前回の記事(第9回)で扱っています。
現場での実務研修はどこまで許容されるか
配属後すぐに専門業務へ就かせるのではなく、まず現場を経験させてから本来の業務に移す、という採用計画も少なくありません。出入国在留管理庁は、日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修であれば、これを認めるとしています。
ポイントは、在留期間中の活動を全体として見たときに、現場での実務研修が在留期間の大半を占めるものになっていないことです。採用から1年を超えて研修を続ける場合は研修計画の提出を求められ、期間の合理性が審査されます。日本語研修目的など合理的な理由がない限り、外国人社員だけに研修期間が長く設定されている場合も認められません。
つまり、本来の専門的業務へ移行することを前提とした一時的な現場経験は許容されますが、現場作業がそのまま業務の中心であり続けることは想定されていません。
許容される期間についても、「◯ヶ月までであれば現場作業でも問題ない」といった、職種ごとの一律で分かりやすい基準があるわけではありません。企業の事業規模や、それに見合う専門業務量が実際に確保されているか、本人のキャリアプランとして専門業務への移行がどう位置づけられているかなど、複数の要素を踏まえて総合的に判断されます。
また、この境界線に関する審査は年々厳格になっている傾向があります。以前は問題にならなかったという理解のまま、その後の運用の変化を確認せずに同じような業務内容で申請を続けると、不許可のリスクが高まることがあります。過去に許可を得た事例があっても、それをそのまま前例として踏襲するのではなく、現時点での運用状況を確認したうえで業務内容を組み立てることをおすすめします。
業種別に見る判断の分かれ目
業種によって、現場作業と専門業務の境界線の引き方はさまざまです。
- 製造業:設計・品質管理・生産技術などの技術業務は対象になりますが、製造ラインでの組立・検品作業そのものが業務の中心になっている場合は対象外と判断されやすくなります。
- 小売業:バイヤー業務、マーケティング、店舗運営の企画管理などは対象になりますが、レジ打ちや品出しが業務の主体になっている場合は対象外と判断されやすくなります。
- 建設業:施工管理、設計、積算などの技術・管理業務は対象になりますが、現場での施工作業そのものが業務の中心になっている場合は対象外と判断されやすくなります。
- 飲食業:店舗運営の企画・管理や、語学力を活かした外国人客対応は対象になり得ますが、調理補助やホール業務が中心になっている場合は対象外と判断されやすくなります。
いずれの業種でも、「肩書」ではなく「実際に何をどれだけの時間従事させるか」で判断される点は共通しています。募集要項や業務分掌を作成する段階から、専門性を要する業務の割合を意識しておくことが重要です。
現場作業を含む業務内容で技人国の対象になるか判断に迷う場合は、お気軽にご相談ください。
実務でよくある相談
製造業の企業から、技人国で採用した人材に生産管理システムの導入と、その定着のための現場作業への同行を担当させたいというご相談を受けたことがあります。業務分掌を確認したところ、現場作業への同行はシステム導入の一環としての位置づけであり、業務の大半は生産技術に関する分析・改善提案であることが分かり、専門業務として整理して申請することができました。現場に関わる業務だからと諦めず、業務全体に占める割合を確認することが大切です。
この記事のまとめ
- 技人国は専門的知識や技術を要する業務を対象とし、単純作業・現場労働は原則対象外
- 対人業務は専門性を伴うかどうかで扱いが分かれ、言語能力を用いる場合は追加の証明資料が必要
- 現場での実務研修は、本来の専門業務への移行を前提とした一時的なものに限り許容され、判断は総合的かつ年々厳格化している
よくある質問
現場研修の期間に明確な上限はありますか?
日数の一律の上限は示されていませんが、在留期間の大半を占めないことが前提です。1年を超える場合は研修計画の提出が求められます。
通訳業務であれば、接客要素があっても問題ありませんか?
通訳・翻訳という専門性が業務の中心であれば認められます。ただし、実態として単純な接客や販売が中心になっている場合は、対象外と判断されることがあります。
業務内容を途中で変更した場合はどうなりますか?
配置転換や職務変更によって業務内容が変わる場合、在留資格の範囲内かどうかをあらためて確認する必要があります。詳細は別の回で扱います。
自社の業務分掌が対象になるか、事前に確認できますか?
募集要項や業務分掌案の段階から、専門性を要する業務の割合について確認することができます。お気軽にご相談ください。
外国人人材の雇用、まずはご相談ください
制度選びや手続きでお困りの際は、下記の問い合わせフォームより承っております。担当の行政書士が内容を確認のうえ、折り返しご連絡いたします。
下記URLからお問い合わせフォームにアクセスできます。
https://www.hal-ulala.jp/foreigner/
出典・参考資料
- 在留資格「技術・人文知識・国際業務」(出入国在留管理庁)|https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html
- 別紙1(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について)(出入国在留管理庁)|https://www.moj.go.jp/isa/content/001413640.pdf
- 別紙4(翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について)(出入国在留管理庁)|https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
執筆者プロフィール
本記事は行政書士法人HAL大阪のスタッフが執筆・監修しています。外国人人材の在留資格や採用手続きに関する実務知見をもとに、正確でわかりやすい情報の発信を心がけています。
最終更新日:2026年10月1日

