はじめに
障害福祉サービス事業所の開設を検討する際には、物件選びや必要な人員、指定申請の流れなど、事前に確認しておきたいことがたくさんあります。
これまで当コラムでも、障害福祉サービスの開業準備や物件選び、サービス管理責任者の要件などについてご紹介してきました。
今回は少し視点を変えて、実際に新規指定申請を行う際、行政書士が申請前にどのようなところを確認しているのかをご紹介します。
指定申請では、必要書類を集めて提出するだけではありません。
例えば、経歴書と実務経験証明書の内容が一致しているか、勤務形態一覧表の人員配置に無理がないか、平面図と実際の事業所の状況が一致しているかなど、提出する書類を相互に確認し、実際の事業運営まで見据えて申請内容を整えることが重要です。
今回は、行政書士法人HALが障害福祉サービスの新規指定申請をサポートする際に、申請前に確認しているポイントを6つご紹介します。
1.経歴書・実務経験証明書・研修修了証などの整合性を確認する
管理者やサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者などについては、経歴書や実務経験証明書、資格証、研修修了証など、複数の書類を提出することがあります。
このとき、単純に必要書類が揃っているかだけではなく、それぞれの書類の記載内容に矛盾がないかを確認します。
例えば、
- 経歴書に記載された職務経験の期間
- 実務経験証明書の従事期間
- それぞれの職務内容
- 資格の取得・登録時期
- サービス管理責任者等の研修を受講した時期
などを照らし合わせます。
自治体によっては、採用時の履歴書の提出を求められる場合もあります。
その場合は、履歴書・経歴書・実務経験証明書の3つについて、勤務期間や職務内容に整合性があるかも確認します。
また、実務経験証明書に記載された従事期間をもとにサービス管理責任者等の研修要件を確認する場合には、基礎研修・実践研修などの研修修了証についても、実務経験との流れに問題がないかを確認します。
加算に関係する研修修了証などがある場合には、経歴書にその研修についての記載があるか、研修修了日や資格取得日について適切に記載されているかなども確認します。
一つひとつの書類を見るだけではなく、複数の書類を並べて確認することがポイントです。
2.法人・物件・契約関係を申請内容と照らし合わせる
指定申請では、職員関係の書類だけでなく、法人や事業所の建物、各種契約書についても確認します。
法人の事業目的
まず確認するのが、法人の定款や登記簿です。
申請する障害福祉サービスを法人として行うことができるよう、申請する事業が法人の目的に記載されているかを確認します。
申請書類に記載する法人情報についても、登記簿の内容と照らし合わせながら確認します。
賃貸借契約書
事業所として使用する建物が賃貸物件の場合は、賃貸借契約書についても確認します。
例えば、
- 事業所として使用することが可能な契約内容になっているか
- 契約期間が開所希望日から使用できる状態になっているか
などを確認します。
物件が決まっているから終わりではなく、実際に指定を受けて事業を開始できる契約になっているかという視点が必要です。
協力医療機関との契約
サービスによって協力医療機関との連携が必要となる場合には、協力医療機関との契約書についても確認します。
こちらについても、契約内容だけではなく、開所希望日から対応できる状態になっているかを確認します。
3.勤務形態一覧表から、実際の人員配置を確認する
指定申請では、人員基準を満たしていることが必要です。
しかし、勤務形態一覧表を確認するときは、単純に「必要な人数が揃っているか」だけを見ているわけではありません。
必要な職員が、必要な時間帯に配置されているかを確認します。
例えば、児童発達支援や放課後等デイサービスであれば、サービス提供時間中に必要な基準人員が配置されているかを確認します。
夏休みなどの長期休業期間にサービス提供時間が変わる場合には、その時間帯についても配置に問題がないかを確認します。
また、管理者とサービス管理責任者などを兼務する場合には、職務ごとの勤務時間をどのように整理するかについても確認します。
自治体によっては勤務時間をまとめて記載できる場合もあるため、申請先自治体の取扱いを確認することが重要です。
他事業所との兼務にも注意
同一法人内の他事業所と兼務する職員がいる場合は、今回申請する事業所の勤務表だけでは判断できないことがあります。
その場合には、兼務先となる他事業所の勤務形態一覧表等も確認し、同じ時間帯に複数の事業所へ配置されていないかを確認します。
また、基準上の人員を満たしていても、実際の運営では職員の急な欠勤や有給休暇の取得などが発生します。
そのため、基準を満たしているかだけではなく、職員が休んだ場合にどのように人員を補充するのか、運営体制をあらかじめ考えておくことも大切です。
4.平面図から、設備・面積・区画を確認する
事業所の平面図も、指定申請前にしっかり確認しておきたい書類の一つです。
平面図を見る際には、まず建物全体の面積や、サービス種別に応じて必要となる設備が配置されているかを確認します。
さらに、使用する部屋については、定員に対して必要な面積が確保されているかを確認します。
例えば、利用定員と一人当たりに必要な面積から、実際に使用する部屋に必要な面積が確保されているかを確認します。
また、相談室についても、
- 他のスペースと適切に区切られているか
- 壁やパーテーション等によって区画されているか
などを確認します。
ただし、設備や区画については、サービス種別だけでなく自治体によっても取扱いが異なる場合があります。
そのため、一般的な基準だけで判断せず、申請先の自治体でどのような設備・区画が求められているのかを事前に確認することが重要です。
平面図と写真が一致しているか
指定申請では、事業所の写真を提出することもあります。
そのため、平面図上では問題がなくても、実際の事業所と異なっていれば修正が必要になる場合があります。
平面図と実際の事業所、そして提出する写真の内容が一致しているかも、申請前に確認しておきたいポイントです。
5.運営規程の内容を一通り確認する
運営規程については、必要な事項が記載されているかだけでなく、実際の事業運営と内容が合っているかを一通り確認します。
例えば、
- 営業日・営業時間
- サービス提供時間
- 利用定員
- サービス内容
- 通常の事業の実施地域
- 利用者から徴収する費用
などについて確認します。
サービス提供時間と加算の関係
加算の算定を予定している場合には、運営規程に記載された営業時間やサービス提供時間などが、予定している加算の要件と合っているかについても確認します。
「加算を算定する予定」としていても、運営規程の内容や実際のサービス提供時間が要件と合っていなければ、算定できない可能性があります。
通常の事業の実施地域と送迎
送迎を行う事業所では、通常の事業の実施地域を送迎可能なエリアとして設定することが一般的です。
そのため、設定した地域について、実際の職員体制で送迎ルートを回ることが可能なのかという視点でも確認します。
運営規程は、単に必要事項を埋めるための書類ではありません。
実際にどのような事業所として運営するのかを反映した内容になっているかを確認することが重要です。
6.開所希望日から逆算して申請スケジュールを確認する
新規指定申請では、書類の内容だけでなく、申請までのスケジュール管理も非常に重要です。
指定申請は、原則として必要な書類を揃えたうえで申請するものです。
ただし、指定権者によっては、どうしても一部の書類の準備が間に合わない場合に、事前に事情を説明して相談することで、後日の補正等で対応できる場合があります。
一方で、必要な書類が揃っていなければ、申請自体を受け付けてもらえない自治体もあります。
そのため、
「足りない書類は後から出せばいい」と考えるのではなく、必要書類を揃えることを前提として、開所希望日から逆算して準備することが基本です。
どうしても間に合わない書類がある場合には、申請先の自治体へ事前に相談し、対応方法を確認します。
自治体によって受付方法や補正の取扱いが異なるため、申請期限だけを見るのではなく、どの時点までに何を準備する必要があるのかを把握しておくことが重要です。
まとめ
障害福祉サービスの指定申請では、必要書類を集めて提出するだけではありません。
行政書士が新規指定申請をサポートする際には、
- 経歴書・実務経験証明書・研修修了証などの整合性
- 法人・物件・契約関係
- 勤務形態一覧表から見た実際の人員配置
- 平面図・設備・面積・区画
- 運営規程と実際の事業運営との整合性
- 開所希望日から逆算した申請スケジュール
など、さまざまな角度から申請内容を確認します。
また、指定申請に必要な書類や設備、人員配置の考え方、受付方法などは、サービスや自治体によって異なる場合があります。
だからこそ、「必要書類が揃っているから大丈夫」ではなく、提出する書類同士の内容や、実際の事業所・職員配置・運営体制まで確認したうえで申請することが重要です。
これから障害福祉サービス事業所の開設を予定している方は、開所希望日だけでなく、物件の契約、人員の確保、各種書類の準備、自治体との事前確認などに必要な期間も考慮し、余裕を持って指定申請の準備を進めましょう。
行政書士法人HALでは、障害福祉サービス事業所の新規指定申請について、事業所の開設準備から申請書類の作成、指定権者との確認・調整までサポートしています。
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