技能実習制度では、来日前に送出機関へ支払う手数料が高額化し、借金を背負って来日する実習生が少なくないことが、失踪等の人権問題の一因として指摘されてきました。育成就労制度では、この問題に対応するため、送出機関手数料の適正化が図られています。
この記事では、育成就労制度における手数料の適正化策と、企業が負担するコストの全体像を整理します。
この記事で分かること
- 技能実習制度における送出機関手数料の問題点
- 育成就労制度での費用上限規制と保証金徴収の禁止
- 二国間取決めと外国政府認定送出機関制度
- 企業側の費用負担の考え方
技能実習制度における送出機関手数料の問題
技能実習制度では、送出国の送出機関に対して外国人本人が支払う手数料が高額化し、来日のために多額の借金を背負うケースが問題視されてきました。手数料が不透明なまま積み上がることが、失踪などのトラブルの一因になっているという指摘は、有識者会議でも繰り返し取り上げられています。
外国人本人が負担する費用の上限
育成就労制度では、送出機関が外国人本人から徴収できる費用の上限が、月給(所定内月額)の2か月分までと定められます。この上限は、費目を問わず、送出しの過程で支払った一切の費用(教育機関や仲介人に支払った費用を含む)が対象です。上限を超える分については、受入機関(育成就労実施者または監理支援機関)側が負担する仕組みになります。
保証金の徴収は禁止
育成就労制度でも、保証金の徴収は禁止されます(育成就労法第47条が禁じる、違約金を定める契約等に該当するとされています)。あわせて、違約金・損害賠償額の予定、旅券・在留カードの保管(本人の同意があっても禁止)、私生活の自由の不当な制限も禁止されています(同法第47条・第48条)。これらは技能実習法でも同様に禁止されていました。
二国間取決めと外国政府認定送出機関制度
育成就労制度では、二国間取決め(協力覚書)を締結した送出国からのみ、原則として受入れが可能になります。また、送出国政府が要件適合を認定した機関のみをリスト化する「外国政府認定送出機関制度」が導入され、外国人育成就労機構(機構)のホームページに国ごとに掲載されます。企業としては、受入れを検討する送出機関がこのリストに掲載されているかどうかを確認することが、適正な送出機関を選ぶ第一歩になります。
企業が負担するコストの考え方
受入企業側の費用としては、監理支援機関への監理費、外国人本人への給与・社会保険料に加えて、送出機関手数料の上限超過分を負担する可能性がある点を踏まえておく必要があります。総額でのコストを比較検討する際は、初期費用だけでなく、監理費や上限超過分の負担ルールまで含めて確認することをお勧めします。費目ごとの負担区分の詳細は、運用要領等で改めて確認が必要です。
実務でよくある相談
「結局、育成就労は技能実習より費用が高くなるのか」というご相談をいただきます。外国人本人の負担上限が設けられる分、受入企業側の負担が増える可能性はありますが、保証金徴収の禁止など人権保護の強化は、失踪リスクの低減にもつながります。総額でのコスト比較と、リスク低減のメリットをあわせてご説明するようにしています。
まとめ
育成就労制度では、外国人本人が送出機関に支払う費用に上限が設けられ、保証金の徴収も禁止されます。二国間取決めを締結した送出国からの受入れが原則となり、外国政府認定送出機関制度も導入されます。企業としては、上限超過分の負担ルールも含めた総額でのコスト把握が重要です。
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出典・参考資料
- 育成就労制度Q&A(Q70, Q71, Q74)(出入国在留管理庁)|https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html
- 育成就労制度の運用要領のポイント(出入国在留管理庁・PDF)|https://www.moj.go.jp/isa/content/001458205.pdf
- 育成就労制度の運用要領(第2章、出入国在留管理庁・PDF)|https://www.moj.go.jp/isa/content/001467947.pdf
- 育成就労制度の運用要領(第6章、出入国在留管理庁・PDF)|https://www.moj.go.jp/isa/content/001457258.pdf
執筆者プロフィール
本記事は行政書士法人HAL大阪のスタッフが執筆・監修しています。外国人人材の在留資格や採用手続きに関する実務知見をもとに、正確でわかりやすい情報の発信を心がけています。
最終更新日:2026年10月28日

