「障害者グループホームを開業したいけれど、何から準備すればよいか分からない」
「戸建て住宅を借りれば、すぐに始められるのだろうか」
「世話人やサービス管理責任者は何人必要なのか」
障害者グループホームを開業するには、法人を設立して物件を用意するだけではなく、障害者総合支援法に基づく共同生活援助の指定を受ける必要があります。
指定を受けるためには、人員基準、設備基準、運営基準などを満たさなければなりません。さらに、建築基準法や消防法への対応、地域ニーズの確認、職員の採用、収支計画の作成なども必要です。
準備の順番を間違えると、契約した物件を使用できない、必要な職員を確保できない、予定していた時期に開業できないといった問題が生じる可能性があります。
この記事では、障害者グループホームの開業を検討している方に向けて、サービスの内容、主な類型、指定申請、人員、物件、開業までの流れを解説します。
障害者グループホームとは
障害者グループホームの正式なサービス名称は、共同生活援助です。
障害のある方が共同生活を送る住居において、主に夜間や休日に、次のような支援を提供します。
- 日常生活に関する相談
- 食事の提供や調理の支援
- 入浴、排せつなどの支援・介護
- 健康管理
- 金銭管理に関する支援
- 服薬に関する支援
- 日中活動先や医療機関との連絡調整
- その他、日常生活に必要な援助
単に住む場所を貸す事業ではありません。
利用者一人ひとりの希望や障害特性、生活状況を踏まえて個別支援計画を作成し、その内容に沿って支援を提供する障害福祉サービスです。
高齢者向けグループホームとの違い
一般に「グループホーム」という言葉は、高齢者向けの認知症グループホームを指す場合もあります。
しかし、障害者グループホームと認知症高齢者グループホームは、根拠となる法律や対象者、指定基準が異なります。
障害者グループホームは、障害者総合支援法に基づく共同生活援助です。
一方、認知症高齢者グループホームは、介護保険法に基づく認知症対応型共同生活介護です。
この記事では、障害のある方を対象とする共同生活援助について解説します。
障害者グループホームの主な3つの類型
共同生活援助には、支援の提供方法などに応じて、主に次の3つの類型があります。
1.介護サービス包括型
介護サービス包括型は、グループホームの従業者が、相談や日常生活上の援助に加えて、入浴、排せつ、食事などの介護を提供する類型です。
障害者グループホームを開業する際に、広く検討される運営形態の一つです。
2.外部サービス利用型
外部サービス利用型は、相談や日常生活上の援助はグループホームの従業者が行い、入浴、排せつ、食事などの介護については、委託契約を締結した外部の居宅介護事業者が提供する類型です。
外部事業者との役割分担や委託契約、連携体制を適切に整備する必要があります。
3.日中サービス支援型
日中サービス支援型は、重度の障害がある方や高齢の障害者などを想定し、夜間だけでなく日中も継続的な支援を提供する類型です。
一般的な共同生活援助とは異なる職員配置や支援体制が求められるため、参入前に事業計画を慎重に検討する必要があります。
どの類型を選ぶかによって、人員配置、支援内容、運営方法、報酬などが変わります。
「どの類型が収益性に優れているか」だけで決めるのではなく、どのような利用者を受け入れ、どのような支援を提供するのかを基準に選択することが大切です。
サテライト型住居とは
共同生活援助には、本体となる共同生活住居と連携しながら、利用者が一人暮らしに近い形で生活する「サテライト型住居」という仕組みもあります。
サテライト型住居は、アパートなどの一室で生活しながら、本体住居の職員から定期的な訪問や相談などの支援を受けるものです。
通常の一人暮らし用物件を借りれば、自由にサテライト型住居として運営できるわけではありません。
本体住居との距離、設備、支援体制、利用期間などに条件があるため、指定権者への事前確認が必要です。
障害者グループホームの開業には指定が必要
障害者グループホームを運営し、障害福祉サービスの報酬を受けるためには、事業所を開設する地域の指定権者から、共同生活援助事業者として指定を受ける必要があります。
指定を受けるために、主に次の基準を満たします。
- 法人に関する要件
- 人員基準
- 設備基準
- 運営基準
- 申請者に関する欠格事由などの要件
さらに、物件については都市計画法、建築基準法、消防法などの関係法令も確認しなければなりません。
障害福祉上の設備基準を満たしていても、建築や消防上の問題によって開業できない可能性があります。
1.法人に関する要件
共同生活援助の指定を受けるためには、原則として法人格が必要です。
主な法人形態には、次のようなものがあります。
- 株式会社
- 合同会社
- 一般社団法人
- NPO法人
- 社会福祉法人
新たに法人を設立する場合は、設立費用だけでなく、今後の事業展開、組織運営、資金調達なども踏まえて法人形態を検討します。
すでに法人を設立している場合は、定款の事業目的に、共同生活援助など実施予定の障害福祉サービスに対応した記載があるか確認します。
事業目的が不足している場合は、定款変更や変更登記が必要になる可能性があります。
2.障害者グループホームに必要な人員
共同生活援助では、事業の類型や利用者数、利用者の障害支援区分などに応じて、必要な職員を配置します。
主な職種は次のとおりです。
管理者
管理者は、事業所全体の運営や職員、業務の管理を行います。
一定の条件を満たし、業務に支障がない場合には、サービス管理責任者などの他の職務と兼務できることがあります。
ただし、兼務できるかどうかは、事業所の規模、勤務時間、他事業所との兼務状況などを踏まえて判断されます。
サービス管理責任者
サービス管理責任者は、利用者の状況や希望を把握し、個別支援計画の作成、見直し、職員への助言・指導などを行います。
配置するためには、一定の実務経験と所定の研修修了などの要件を満たす必要があります。
「福祉業界で長く働いている」「基礎研修を修了している」というだけで配置できるとは限りません。
採用前に、資格証、研修修了証、実務経験証明書などを確認しましょう。
世話人
世話人は、食事の準備、掃除、生活上の相談など、利用者の日常生活を支援します。
必要な配置数は、共同生活援助の類型や届け出る人員配置区分、利用者数などによって異なります。
生活支援員
生活支援員は、主に介護サービス包括型や日中サービス支援型において、入浴、排せつ、食事などの介護や生活支援を行います。
必要な配置数は、利用者の障害支援区分や人数などを基に算定します。
夜間支援従事者
夜間支援体制を整え、報酬上の加算などを算定する場合は、夜間の巡回、緊急対応、利用者への支援などを行う職員の配置が必要です。
宿直、夜勤、オンコールなどの言葉だけで判断せず、実際の勤務内容と報酬上の要件を確認する必要があります。
人員基準は「人数」だけでなく勤務時間も確認する
人員基準を確認するときは、単に職員の人数を数えるだけでは不十分です。
次のような点を確認します。
- 常勤か非常勤か
- 週に何日、何時間勤務するか
- 常勤換算で何人になるか
- 他の職務と兼務するか
- 他の事業所とも兼務するか
- 夜間や休日の勤務体制
- 利用者の障害支援区分
- 採用予定者が資格・研修要件を満たすか
「4人採用する予定だから大丈夫」ではなく、勤務形態一覧表へ落とし込んだときに基準を満たせるか確認しましょう。
サービス管理責任者の要件については、関連記事「サービス管理責任者(サビ管)とは?要件・実務経験・必要な研修を解説」もご覧ください。
3.障害者グループホームの物件選び
グループホームの開業準備で、特に慎重に進めたいのが物件選びです。
「一般の戸建て住宅だから、そのままグループホームとして使える」とは限りません。
物件を契約する前に、少なくとも次の点を確認します。
- 共同生活援助の設備基準
- 居室の数と面積
- 共用スペース
- 台所
- トイレ
- 浴室
- 洗面設備
- 収納設備
- 避難経路
- 建築物の用途
- 用途変更の要否
- 消防設備
- 用途地域などの土地利用規制
- 貸主の承諾
- 近隣環境
グループホームは利用者の「住まい」であるため、プライバシーを確保できる居室と、交流できる共用部分の両方が必要です。
利用者の障害特性に応じて、段差、階段、手すり、浴室、トイレなども確認します。
消防設備は契約前に確認する
共同生活援助では、建物の構造、面積、階数、利用者の状態、収容人数などによって、必要となる消防設備が異なります。
必要になる可能性がある設備には、次のようなものがあります。
- 消火器
- 誘導灯
- 自動火災報知設備
- 火災通報装置
- スプリンクラー設備
- 非常警報設備
- 防炎性能を備えたカーテンなど
物件契約後に消防署へ相談した結果、想定していなかった設備工事が必要になることがあります。
工事費用だけでなく、工事期間によって開業が遅れる可能性もあります。
候補物件の図面や利用予定人数などを準備し、できる限り契約前に消防署へ相談することが重要です。
建築基準法上の確認も必要
既存の戸建て住宅やアパートをグループホームとして使用する場合は、建築基準法上の用途や手続きについても確認が必要です。
主な確認資料には、次のものがあります。
- 建築確認済証
- 検査済証
- 建築計画概要書
- 建物の平面図
- 登記事項証明書
- 現在の建物用途が分かる資料
用途変更の手続きが必要かどうかは、建物の規模、現在の用途、使用方法などによって異なります。
不動産会社から「事業利用可能」と聞いていても、建築基準法や消防法上、共同生活援助に使用できることまで確認されているとは限りません。
物件選びについては、関連記事「障害福祉事業の物件選び|契約前に確認すべき8つのポイント」もご確認ください。
4.地域のニーズと自治体の取扱いを確認する
障害者グループホームを開業する前に、予定地域の利用ニーズを確認します。
確認したい主な内容は次のとおりです。
- 地域で不足している住居や支援の種類
- 想定する利用者の障害特性
- 重度障害者の受入れニーズ
- 男性・女性それぞれの需要
- 医療的ケアへの対応状況
- 日中活動先との連携
- 市町村の障害福祉計画
- 新規開設についての市町村の意見
- 公募や事前説明の要否
自治体によっては、指定申請の前に市町村への説明や事前協議を求めています。
また、共同生活援助の新規指定では、事業計画や地域ニーズ、支援の質について、これまで以上に慎重な確認が行われる傾向があります。
物件や職員を確保する前に、開設予定地域の指定権者と市町村へ相談しましょう。
5.運営規程や支援体制を整える
指定申請では、建物と職員を用意するだけでなく、開業後に適切な支援を提供できる体制を整えます。
主に次のような書類や仕組みが必要です。
- 運営規程
- 重要事項説明書
- 利用契約書
- 個人情報に関する同意書
- 個別支援計画に関する様式
- 苦情対応の体制
- 事故発生時の対応
- 緊急時の連絡体制
- 虐待防止の体制
- 身体拘束等の適正化に関する体制
- 感染症対策
- 業務継続計画
- 非常災害対策
- 防災・避難訓練
- 職員研修
- 夜間・休日の支援体制
書類を作成するだけではなく、職員が内容を理解し、実際に運用できる状態にする必要があります。
地域連携推進会議への対応
共同生活援助では、事業所の支援状況を地域へ開き、サービスの質や透明性を確保するため、地域連携推進会議や構成員による事業所訪問への対応が求められます。
会議には、利用者、家族、地域住民、福祉関係者などの参加が想定されます。
開業後に慌てて対応するのではなく、地域との関係づくりや情報提供の方法も開業準備の段階から検討しておきましょう。
2026年から共同生活援助の支援の質がより重視されている
厚生労働省は2026年2月、共同生活援助の運営や支援に関するガイドラインを公表しました。
共同生活援助は、障害のある方にとって単なるサービス提供場所ではなく、日常生活を送る大切な住まいです。
そのため、新規指定では、基準を形式的に満たしているかだけでなく、次のような点も重要になります。
- 利用者の意思や希望を尊重した支援ができるか
- 障害特性に応じた支援を提供できるか
- 適切な個別支援計画を作成できるか
- 職員教育や研修体制が整っているか
- 虐待防止や権利擁護の体制があるか
- 地域や関係機関と連携できるか
- 安定して事業を継続できる収支計画になっているか
「物件を用意し、最低限の職員を配置すれば開業できる」という考え方では不十分です。
誰に、どのような暮らしと支援を提供するのかを事業計画へ具体的に落とし込む必要があります。
障害者グループホームの開業までの流れ
一般的な開業準備の流れは、次のとおりです。
1.事業構想を整理する
受け入れる利用者、定員、共同生活援助の類型、支援内容、開設地域などを検討します。
2.地域ニーズと自治体の取扱いを確認する
市町村の障害福祉計画、地域ニーズ、事前説明や公募の有無などを確認します。
3.法人を準備する
法人を設立するか、既存法人の定款目的を確認します。
4.人員配置計画を作成する
管理者、サービス管理責任者、世話人、生活支援員、夜間支援従事者などの配置を検討します。
5.候補物件を確認する
指定基準、建築基準法、消防法、都市計画法などを確認します。
6.指定権者や関係機関と事前協議する
指定担当部署、市町村、建築担当部署、消防署などへ相談します。
7.物件契約・職員採用・必要な工事を進める
必要な確認を終えてから、後戻りしにくい契約や工事を進めます。
8.申請書類を作成・提出する
指定申請書、勤務形態一覧表、平面図、運営規程などの必要書類を提出します。
9.審査・補正・現地確認に対応する
指定権者から修正や追加資料を求められた場合は、期限内に対応します。
10.指定を受けて開業する
指定通知を受け、利用者との契約、支援開始、報酬請求などを進めます。
実際の手順や期限は自治体によって異なります。
例えば大阪府では、共同生活援助の新規指定について事前協議が必要とされ、審査に時間を要するため、早めの手続きが案内されています。
希望する開業日から逆算し、余裕を持って準備を始めましょう。
指定申請に必要となる主な書類
自治体によって異なりますが、共同生活援助の指定申請では、一般的に次のような書類を準備します。
- 指定申請書
- 共同生活援助に関する付表
- 法人の登記事項証明書
- 定款
- 組織体制図
- 従業者の勤務形態一覧表
- 管理者の経歴書
- サービス管理責任者の経歴書
- 資格証や研修修了証の写し
- 実務経験証明書
- 事業所・住居の平面図
- 建物の写真
- 賃貸借契約書
- 貸主の使用承諾書
- 運営規程
- 利用者からの苦情を解決するために講ずる措置の概要
- 協力医療機関との連携に関する書類
- 事業計画書
- 収支予算書
- 損害賠償保険に関する書類
- 消防・建築関係の確認書類
- 誓約書
必要書類の名称や提出方法は指定権者によって異なります。
ほかの自治体の様式を流用せず、必ず申請先が公表している最新の手引きと様式を確認しましょう。
開業資金と運転資金も必要
障害者グループホームの開業には、次のような費用がかかります。
- 法人設立費用
- 物件の敷金・礼金・仲介手数料
- 開業前の家賃
- 内装・改修工事費
- 消防設備工事費
- 家具・家電・備品の購入費
- 車両費
- 職員の採用費
- 開業前研修費
- 人件費
- 保険料
- 指定申請などの専門家報酬
指定を受けても、すぐに満床になるとは限りません。
利用者が少ない期間も、家賃、人件費、水道光熱費などは発生します。また、サービス提供から報酬の入金までには時間があります。
定員がすべて埋まる前提ではなく、利用者が段階的に増える前提で資金計画を作成しましょう。
障害者グループホームの開業でよくある失敗
開業準備では、次のような失敗が考えられます。
- 地域ニーズを確認せず、物件を契約した
- 一般の戸建て住宅なら使用できると思い込んだ
- 消防設備工事に想定以上の費用がかかった
- サービス管理責任者の要件確認が不十分だった
- 世話人や夜間職員を確保できなかった
- 勤務形態一覧表にすると人員基準を満たさなかった
- 収支計画を満床前提で作成していた
- 利用者募集の方法を決めていなかった
- 書類だけを整え、実際の支援体制を準備していなかった
- 申請期限に間に合わず、開業が延期になった
特に物件契約と職員採用は、後から変更しにくい重要な判断です。
契約を進める前に、指定要件と開業までのスケジュールを整理しましょう。
まとめ
障害者グループホームを開業するためには、主に次の準備が必要です。
- 対象者と支援内容を明確にする
- 共同生活援助の類型を選ぶ
- 地域ニーズと自治体の取扱いを確認する
- 法人格と定款目的を確認する
- 必要な職員を確保する
- 物件、建築、消防の要件を確認する
- 運営体制と必要書類を整える
- 指定申請を行う
- 開業後の資金と利用者確保を計画する
障害者グループホームは、障害のある方が地域で自分らしく暮らすための大切な住まいです。
指定を受けることだけをゴールにせず、開業後も安定して質の高い支援を提供できる事業計画を作りましょう。
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- 候補物件で指定を受けられるか確認したい
- サービス管理責任者や世話人の配置を確認したい
- 法人設立から指定申請までまとめて相談したい
- 希望する開業日から逆算して準備したい
- 複数の住居を展開する計画について相談したい
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※共同生活援助の指定基準、必要な手続き、事前協議、建築・消防上の取扱いなどは、事業所所在地、建物、事業類型、利用者の状況、自治体の取扱いなどによって異なります。実際に開業準備を進める際は、管轄する指定権者、市町村、建築担当部署、消防署その他の関係機関へ個別にご確認ください。

